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バカにしやがって!
掲げたナイフを振り下ろす。
刺されて、血を流し、桜に与えろ。
「死ねッ」
叫んで、振り下ろ……
「ぐっ」
振り下ろそうとした、その時、右手から何かがぶつかり、よろめく。
次の瞬間、腹部に強い勢いで何かが当たる。口からうめき声が漏れる。そのまま、腕をねじ上げられると、地面に叩きつけられた。上からぐっと圧力をかけられる。
「沙耶? 怪我は」
見知らぬ女の声。
「大丈夫。ありがとう」
女子高生がスカートのすそを整えながら、立ち上がりながら答えた。
かろうじて動く頭をひねってみると、見知らぬ男が二人と女が一人、どこからともなく現れていた。背中には、背の高い男が乗っている。
なるほど、こいつに邪魔されたのか。
「それにしても、こんなのにあっさり捕まって……。さっき受け身取るのも失敗したでしょ? 今回は作戦だったからいいけど。ちゃんと護身術学んどきなさいっていつも言ってるでしょ? あんた、昔からすぐさぼるんだから」
背の高い女が、女子高生を相手にくどくどと説教を始めている。なんだというのだ……。
「……うん、反省した。明日からちゃんとやる」
「円、そういうことはさ、着信気 づくようになってから言おうよ」
「……それは、まあ、そう思うわ」
「あ、珍しく素直に反省した」
「ホントだ、珍しい」
「慎吾も直も、人のことなんだと思ってるの」
「何って、なあ?」
「ああ」
頭上でぽんぽん繰り広げられる会話。四人の人物を見上げる。きっと間抜けな顔をしていることだろう。
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