櫻の樹の下には屍体を埋めている

13/17
前へ
/17ページ
次へ
 バカにしやがって!  掲げたナイフを振り下ろす。  刺されて、血を流し、桜に与えろ。 「死ねッ」  叫んで、振り下ろ…… 「ぐっ」  振り下ろそうとした、その時、右手から何かがぶつかり、よろめく。  次の瞬間、腹部に強い勢いで何かが当たる。口からうめき声が漏れる。そのまま、腕をねじ上げられると、地面に叩きつけられた。上からぐっと圧力をかけられる。 「沙耶? 怪我は」  見知らぬ女の声。 「大丈夫。ありがとう」  女子高生がスカートのすそを整えながら、立ち上がりながら答えた。  かろうじて動く頭をひねってみると、見知らぬ男が二人と女が一人、どこからともなく現れていた。背中には、背の高い男が乗っている。  なるほど、こいつに邪魔されたのか。 「それにしても、こんなのにあっさり捕まって……。さっき受け身取るのも失敗したでしょ? 今回は作戦だったからいいけど。ちゃんと護身術学んどきなさいっていつも言ってるでしょ? あんた、昔からすぐさぼるんだから」  背の高い女が、女子高生を相手にくどくどと説教を始めている。なんだというのだ……。 「……うん、反省した。明日からちゃんとやる」 「円、そういうことはさ、着信気 づくようになってから言おうよ」 「……それは、まあ、そう思うわ」 「あ、珍しく素直に反省した」 「ホントだ、珍しい」 「慎吾も直も、人のことなんだと思ってるの」 「何って、なあ?」 「ああ」  頭上でぽんぽん繰り広げられる会話。四人の人物を見上げる。きっと間抜けな顔をしていることだろう。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加