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気の強そうな顔をした女が、こちらを見ると優雅に微笑んだ。
「ただの人間に言っても無意味でしょうけれども、一応自己紹介しておきましょうか。私は、一海円。お祓い家業を継ぐ予定の、女子大生よ」
「……は?」
思わず声がでた。
なんだって?
構わず、一海円と名乗った女は紹介を続けて行く。
「こっちは、従弟の直純。それと探偵の渋谷慎吾」
「おお、探偵で紹介してくれるんだ」
「ナンパな大学生の方がよかった? それから、貴方が狙ったのが、私の妹の沙耶。ねぇ、私の可愛い妹に手ぇ出して、タダで済むと思ってるのかしら?」
優雅な笑みをそのままに、一海円が吐き捨てる。そして、顔を覗き込むようにしゃがみこんだ。
「言い分があるなら聞くけど?」
「……桜を」
首だけで強引に見上げる。咲いている桜の花。夜空に浮かび上がる、白い花弁。
「桜を咲かせなきゃいけないんだ。綺麗に。美しく。それが、俺の役目だから。だって、神様がそういうから」
「櫻の樹の下には屍体が埋まっているってことか」
背中の男が言う。
「そう!」
わかってくれたのか。そう思って大きな声を出すと、
「同意したわけじゃねーよ」
探偵とかいう男の方が呆れたように言った。
「死体が無くても花は咲く、自然舐めんな」
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