7人が本棚に入れています
本棚に追加
遠くからパトカーのサイレンが聞こえる。
「ダメだわ」
一海円がため息をつくと、立ち上がった。
「話になんない」
「まぁ、別に何かが憑いているわけでもないし、俺たちの出番はないよね」
背中の男が呆れたように続ける。
「ペットは器物損壊だから……、碌な罪にならないだろうな」
「それを避けるためにわざわざあたしが囮になったんですよ」
「え、そういうことだったの?」
「そうよ。沙耶が殺されそうになったという体でいくから。というか、実際それは事実だしね……」
「本当、ふざけんなって感じだよな」
怒りをこらえたような低い声とともに、ぐっと背中の重みが増す。
「あの、直純、円……。その人、一応ただの人間だから。過度な危害加えるとお前らが罪に問われるから……」
「それもまた不満なのよねー。霊なら、ぼこれるのに」
「本当だよな!」
「……沙耶ちゃん、なんとか言ってやって」
「ごめんなさい、渋谷さん。あたしも、今回ばっかりは二人と同意見です」
頭の悪そうな会話の背後で、サイレンが近づいてくる。
「残念だけど、おとなしく警察に引き渡しましょう。民間人に出来ることはもうないわ」
「そうだな」
「とりあえず、泣いたりしておいた方がいい?」
さっきまで一ミリも泣いていなかった顔で、女子高生が問う。
「そうね。慰めてあげるから」
笑うと一海円は女子高生の隣にしゃがみこみ、慰めるように肩を抱く。
なんと白々しい……。
自分の立場も忘れて呆れて二人を眺めていると、
「なんていうかさ」
探偵が哀れむような顔で言った。
「この人たちに目をつけられたのが運の尽きだと思うよ」
サイレンが止まり、ばたばたとコチラに走ってくる足音が聞こえた。
最初のコメントを投稿しよう!