櫻の樹の下には屍体を埋めている

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 学食に向かう。昼時を過ぎているから、人は少なめだった。 「それで?」 「サオリの猫がいなくなったの」 「ミルキーっていうんです」  ケータイを渡される。そこには、白い猫が微睡んでいた。 「またか」  思わず呟く。 「また?」 「ここ一カ月多いんだよ。犬猫探し。これで、八件目だね」 「そんなに? 忙しいわねぇ、あんたも」 「え、あの、それじゃあ、ミルキーは探してもらえないんですか……」 「いやいや」  泣きそうになったサオリに慌てて片手をふって否定の意を見せる。 「一匹も二匹も一緒だから」  俺のやり方は人海戦術だから、と笑ってみせる。 「家は、この辺?」 「あたしん家の近く」 「チカちゃん家の……。じゃあ、チャリ圏内か。いなくなったのは?」  幾つかの質問を重ねて、ノートにメモしていく。 「うん、わかった」  頷きながら、ケータイを取り出す。 「俺のやり方は人海戦術。俺自身も探すけど、基本は他人任せだ。君のそのミルキーの写真を知り合いに送って見かけたら連絡してもらう。ミルキーの写真、ばらまくことに なるけど、いい?」 「はい、それは」  サオリはこくりと頷いた。 「チカちゃんが、その方法で逃げたインコを見つけてもらったって言ってて」 「慎吾は無駄に顔広いから」 「だから、渋谷さんに頼もうって思って」  よろしくお願いします、と頭を下げられる。 「うん、引き受けたからにはちゃんとやるよ」  それじゃあ、写真と連絡先いい? とお互いのケータイを操作する。
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