7人が本棚に入れています
本棚に追加
学食に向かう。昼時を過ぎているから、人は少なめだった。
「それで?」
「サオリの猫がいなくなったの」
「ミルキーっていうんです」
ケータイを渡される。そこには、白い猫が微睡んでいた。
「またか」
思わず呟く。
「また?」
「ここ一カ月多いんだよ。犬猫探し。これで、八件目だね」
「そんなに? 忙しいわねぇ、あんたも」
「え、あの、それじゃあ、ミルキーは探してもらえないんですか……」
「いやいや」
泣きそうになったサオリに慌てて片手をふって否定の意を見せる。
「一匹も二匹も一緒だから」
俺のやり方は人海戦術だから、と笑ってみせる。
「家は、この辺?」
「あたしん家の近く」
「チカちゃん家の……。じゃあ、チャリ圏内か。いなくなったのは?」
幾つかの質問を重ねて、ノートにメモしていく。
「うん、わかった」
頷きながら、ケータイを取り出す。
「俺のやり方は人海戦術。俺自身も探すけど、基本は他人任せだ。君のそのミルキーの写真を知り合いに送って見かけたら連絡してもらう。ミルキーの写真、ばらまくことに なるけど、いい?」
「はい、それは」
サオリはこくりと頷いた。
「チカちゃんが、その方法で逃げたインコを見つけてもらったって言ってて」
「慎吾は無駄に顔広いから」
「だから、渋谷さんに頼もうって思って」
よろしくお願いします、と頭を下げられる。
「うん、引き受けたからにはちゃんとやるよ」
それじゃあ、写真と連絡先いい? とお互いのケータイを操作する。
最初のコメントを投稿しよう!