櫻の樹の下には屍体を埋めている

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「あの、報酬って」 「あれ、きいてない?」 「見返りは求めてくるよ、とは言われましたけど……」 「なんでチカちゃん、そういう怪しげな言い方するの」 「だって、怪しいじゃない」 「いいけどさ」  一つ溜息。 「基本はボランティア。でも、もしもミルキーが見つかったら、成功報酬として」  そこでサオリを見ると、笑ってみせた。 「デートして?」 「……は?」  一気に、サオリの顔が怪訝そうになった。 「我が侭は言わない。学食デートでいいよ?」  必要ならそっから落とすし。  サオリはちょっと考えてから、 「……そんなんでいいなら」 「ありがと。それじゃ、契約は成立ね」  さて、とミルキーを探すのを頼むメールを作成し始める。 「つーか、慎吾さぁ。カノジョできたんじゃないの? 他大の」 「茗ちゃんのこと? カノジョつーか、うーん、カノジョなのかなぁー? 色々ややっこしくて言い切れないんだよなー」 「何それ、ばっかじゃないの?」 「よく言われる。……そろそろ四限はじまるよ? 俺、空きだけど」  本当はサボリだけど。正直、授業に出ている場合じ ゃない。 「え、うっそ。本当だ。じゃあ、慎吾頼むわ」 「あの、よろしくお願いします」 「うん」  ぺこぺこと頭を下げるサオリに微笑みかける。二人の姿が見えなくなると、一つ溜息。 「しかし、さすがにこれはなー」  ノートを捲る。今月に入ってから引き受けた、犬猫探しの依頼。どれもまだ、見つかっていない。確かに今までも見つからなかったこともあったが、これだけの数がまったく見つからないというのはおかしい。逃げただけならば、見つかっていていいはずだ。 「……これは、人的なものを感じますよ、俺は」  誰に言うでもなく呟くと、出来上がった捜索依頼のメールを送信した。
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