櫻の樹の下には屍体を埋めている

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 + 「ただいま」  大道寺沙耶は、言いながら玄関のドアをあけた。部屋から漂ってくる美味しそうな匂い。今日の夕飯は、中華系のようだ。 「おかえりー、遅かったね? デート?」 「んー」  室内から返ってくる声に、曖昧に返事をする。  リビングまで来ると、エプロン姿の一海円が出迎えてくれた。 「デート?」  何故、重ねて聞く。 「デートだったんだぁー。もっと遅くても良かったのにぃー」  基本的に、この姉代わりの女性のことは大好きだが、こういうところは本当うざい。  無視して自室に戻ろうとすると、 「そうだ、沙耶」  引き止められた。その声がからかいの色を失っていたので、素直に足を止める。 「慎吾がね、また猫の写真送ってきて」 「ああ、直兄の友達の探偵さん? また猫探し?」 「そー。一応、送るから見かけたら教えてー」 「ん」  ちょっと待ってねーと、円がケータイを操作する。鞄からケータイを出し、テーブルに置くと、一旦自室にひっこんだ。
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