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「これなんて読むの?」
「ん、ああそれは、やえざくら、だよ」
「なにそれ。普通の桜とどう違うの」
僕が尋ねると、待ってましたと言わんばかりにマー君は顔を輝かせた。
「八重桜というのは花びらが重なって咲くような桜の呼び方で、日本にはいろんな種類があるんだ」
その後マー君の口からカンザン、フゲンゾウ、ヤエベニシダレ、といった呪文のような言葉が出てきた。
「―とにかく、これは大事にするよ」僕はキーホルダーをブレザーのポケットに入れた。「ところで、今月の終わり頃に花見をするんだけどマー君も来ない?」
「どこでするの?」
「もちろん、そこでだよ」
僕は目の前の桜の木を指さした。花見をすることを思い出したのも川沿いの桜が見えたからだった。
「うーん、そうだなあ」
マー君は考える仕草をした。僕はマー君なら喜んでオーケーするだろうと思っていたから少し驚いた。
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