桜とトモに散る

13/22
前へ
/22ページ
次へ
「これなんて読むの?」 「ん、ああそれは、やえざくら、だよ」 「なにそれ。普通の桜とどう違うの」 僕が尋ねると、待ってましたと言わんばかりにマー君は顔を輝かせた。 「八重桜というのは花びらが重なって咲くような桜の呼び方で、日本にはいろんな種類があるんだ」 その後マー君の口からカンザン、フゲンゾウ、ヤエベニシダレ、といった呪文のような言葉が出てきた。 「―とにかく、これは大事にするよ」僕はキーホルダーをブレザーのポケットに入れた。「ところで、今月の終わり頃に花見をするんだけどマー君も来ない?」 「どこでするの?」 「もちろん、そこでだよ」 僕は目の前の桜の木を指さした。花見をすることを思い出したのも川沿いの桜が見えたからだった。 「うーん、そうだなあ」 マー君は考える仕草をした。僕はマー君なら喜んでオーケーするだろうと思っていたから少し驚いた。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加