桜とトモに散る

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「タカ君」 五分程歩いたところで、トントン、と右の肩を叩かれた。振り向くと同じクラスのマー君が立っていた。名前が雅人だからマー君。僕の名前が貴史だからタカ君。ただそれだけ。 マー君とは六年生になって初めて同じクラスになったが、話しているうちにいつの間にか一番の親友になっていた。家も近い事が分かったから、一緒に登下校している。 「おはよう、今日はあったかいね」 マー君はかけているメガネを指でずり上げた。その仕草は彼の真面目な性格とばっちりはまっている。 「うん、着てくる服間違えた」僕は服の袖をまくりあげた。「マー君も暑そうだね。マフラーはとったほうが良くない?」 マー君は下はジーパンで、上はもこもこした厚手の黒いジャンパーを着ていて、さらにマフラーも巻いている。寒い日であればその暖かそうな格好を羨ましく思ったかもしれないが、今日に限っては見ているだけでも暑苦しかった。
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