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「これって…………」  俊介が差し出してきた小さな箱。おそるおそる中を開けると、キラリと光るプラチナのリングと、同じ色に輝く、繊細な細工のチェーンが入っていた。  唖然としている相田の手から箱を取ると、俊介はリングを取り出した。 「指、出してください」  差し出した相田の震える左手を、しっかりと俊介がつかむ。 「よかった……ぴったりだ。ねえ、和雅さん」  薬指にはめられたリングを、惚けたようにみつめている相田に、俊介が続けた。 「俺と悠成の家族になってくれませんか」 「え……」 「俺は、もうずっとそのつもりでいましたけど、和雅さんはどこか一歩引いてましたよね」  それは当然だ。俊介と悠成は紛れもない家族だけれど、相田は、ふたりにとって「家族みたいなもの」だからだ。 「だからちゃんと、伝えたかった。愛する人と一緒にいられて、今のままでも十分満足だったんですけど、やっぱり、和雅さんにも同じように感じてほしいから」  証しを贈るのにいろいろ考えて、プラチナのリング以外、思いつかなかったのだという。また、一緒にネックレスのチェーンも入っているのが、食べ物を扱う相田への俊介らしい気配りで、胸が熱くなる。  だが、それでいいのだろうかという、相田の気持ちは消えない。今のままだって十分、幸せなのだから、そこに相田が割り込まなくてもいいのではないかと考えてしまう。  なまじ逃げ場をなくしてしまうと、どうしようもなくなったときに、断ち切るのは死ぬほど辛いから。それがわかっているから、あんなこと、もう二度と経験したくない。
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