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「今の歳で理解できる範囲ですが、悠成には前からしっかりと話してあります。パパから話すまではって、内緒にしてもらってたけど」 「なんだよ……それっ……」  昨日のやりとりを思い出し、また嗚咽が止まらなくなる。だから俊介が帰ってきたときに三人で抱き合って「家族だ」と言ったのだ。  あの時、悠成が得意げな顔をしていたのが不思議だったが、これで腑に落ちた。 「これから俺、もっともっと頑張って、和雅さんに飽きられないようないい男になりますから」 「……もうとっくにいい男だよ、オマエは」 「和雅さん」 「オレはずっとほしいものがあって……それは絶対に叶わないと思ってたのに…………こんなことが……あるなんて」 「うん、俺もこんな日が来るなんて、今でも信じられないくらいです」  ぎゅっと抱き込まれて、ますます涙が止まらなくなる。 「うれしい。和雅さんも同じことを望んでくれてた」 「うん……」  だってずっと――ほしかったんだ。  家を追い出されてからは、望んでいることを忘れるくらい遠い希望だった自分の家族が今、目の前にある。 「だからこれからも――俺たちはきっと、うまくやれると思います」  俊介がそういうんだから、そうなのだろう。過去とか、年齢とか、血のつながりまでも、自分たちの前では、些細なことになってしまうくらいに。  俊介と悠成と自分――三人で描く、これからの未来を想像しながら抱き合った。 _END_
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