振られても好きなひと

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 案の定、飲み会は、出席したことをすぐに後悔するほどつまらなかった。時間の使い方もまるきり違うし、共通の話題などあるはずもなく、やはり話は合わない。  開始早々帰りたくてそわそわとタイミングを見計らっていた。それなのに横にいる愛美からは、先程からひっきりなしに聞かれたくないことばかり尋ねられて、俊介はだんだん不機嫌になった。 「なんか年上の女性と一緒に歩いてるの見たよ。彼女にしては年、行き過ぎじゃない?」 「また劇団のチケットあったら声かけてよ。大勢誘ってっていくからー、そしたら俊介も助かるでしょ? 私も俳優の友達がいるなんて鼻が高いし」  とんでもないと思った。一度愛美と彼女知り合いだかが観にきてくれたが、上演中、皆が熱演しているところでベラベラとしゃべりまくり、観劇どころではないひどいマナーだった。劇団の先輩方にも申し訳なくて、とても迷惑だったことは忘れられない。 「えっ、劇団? 四季ってところかしら? あーそう。違うのね。劇場は? 帝国劇場じゃないの。あなた男だし、宝塚でもないわよねぇ。うーん、やめておくわ」  あなたがしていることに、とりたてて興味はないわ。そうはっきり言い捨てた年上の女性の方が、ずっと気楽だった。  身体を差し出すつもりがない俊介に無理強いすることはないし、それを知ってからは「若い男を連れ回せればそれでいい」と欲求がはっきりしているので、ずっとつきあいやすい。  また、その見返りに食事を奢ってもらったり、お小遣いをくれたりするから、ありがたいことこの上なかった。連れ回す用に、服も買ってくれるし。
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