振られても好きなひと

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「ホントひどいよ!」  ヒステリックな声でまた現実に戻される。俊介だって、ふたりでホテルにいることに戸惑っているのに、そこは愛美にとって重要ではないみたいだ。 「……やっちゃったってこと、かな?」  もしそうならば、ちゃんと話し合わなければならない。自分は、誰かとつきあうようなことはしない。そこまで夢中になれる相手がいないからだ。  愛美の顔は怒りのためか、ますます赤みを帯びてくる。許してもらえないかもしれないが、正直に事情を話し、納得してくれるまで愛美には何度でも謝るつもりだった。 「その逆だから!! ここまで来て据え膳食わねえなんて、それでも男かよ。ありえないんだけど」 「えっ……と、そう、なんだ?」  そうか、やってないんだな。とぼんやりする頭で反芻した。  やっぱり自分は、想ってない相手とはできないんだと再確認する。ほっとしたようながっかりしような、複雑な思いだ。  いっそのこと、誰彼かまわずヤリまくれたら、ここまで悩む必要もないのかもしれない。 「なにニヤついてるんだよ。キスしても、胸揉んでも、勃たなかったインポ野郎のくせにっ!」 「い、インポ野郎って……」  そんなわけない。俊介は毎晩、ありとあらゆるシチュエーションである男を犯し、その想像で抜いてるんだから。  今だって、ふだんは俺にツンツンするくせに、ベッドの中ではビッチで淫乱で甘え上手な姿。最近お気に入りの、年上ビッチ・ツンデレモードを思い返すだけで、股間が痛くなる。
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