振られても好きなひと

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 それにしても愛美には驚く。ずっと俊介の前ではかわいらしく振る舞っていたから、あんな言葉遣いをするなんて思わなかった。あれが本性なのかもしれない。女って怖い。 「ってぇ……ん、にすんだよ」 「マジ最低」  もう一度同じ場所をビンタされて、頬の痛みがぶり返す。愛美はそのままひらひらのブラウスを着ると、部屋から出て行ってしまった。  しばらくして冷静になると、部屋にひとり残された俊介は心配事がでてきた。 「うわ、俺……金持ってるのかな?」  おそるおそる財布を覗くと、かろうじて万札が一枚あった。  よかったと安堵すると、今度は腹立たしくなってくる。記憶ははっきりしていないが、自分が望んで愛美とホテルに行ったとは思えない。それなのに、なぜホテル代を払わなくてはならないのだろうか。
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