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「カズ、お客様全員に飲み物渡ったよ」 「ありがと、じゃあ……このサラダから順にお出ししてくれる?」 「オッケー!」  普段はひとりで回している店だが、今日は十名ほどが一気に飲み食いする宴会スタイルなので、ゲイ友のひとりであるシンジに助っ人で入ってもらっていた。  シンジは、急に音信不通になったと思ったら各地を放浪していたり、かと思えば男性のヒモみたいなことをしたりと、頭のてっぺんからつま先までうさん臭い。  だがいろいろな経験をしている分器用で、今までにも何度か手伝ってもらっている。  堅物気質の相田とはあまりにもかけ離れているタイプだが、シンジの何事にもあまり頓着しないスタイルが逆に心地よく、また互いに全く好みではなかったのが幸いしてか、十年来の友人を続けている。 「それはそうと、あの子……鈴尾俊介っていうんだ。名前は初めて知った」 「知ってるのか?」 「どこの事務所かしらないけど、絶賛売り出し中なんじゃない? ちょいちょい見るよー、最近」  確かに背も高ければ見た目もいい。だが俳優やタレントのような華やかな職業は、自分の生活とかけ離れすぎていて、知人がいるなんてまるで想像もしたことがなかった。     
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