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だが心配が杞憂に思えるほどやさしく髪を洗われた。頭を抱き寄せるようにして丁寧に泡をすすがれてから、続いて身体も洗われる。恥ずかしさよりだるさが勝っていたので、素直にありがたかった。
されるがまま、寄りかかるように目を閉じていると、俊介の動きが止まった。
「俊介?」
「俺に触られるのは嫌でしょう?」
意外な思いで見上げると、ふいと顔を反らされたまま、ボディタオルを差し出してくる。
「あとは……自分で洗ってください」
「お……おう」
ごしごしと自分で身体を洗っていると、手持ちぶさたになったのか浴槽のふちに腰掛けた俊介がボディーソープを手に出して自分の身体を撫でていた。
「俺だってそこまで人でなしじゃないよ」
「ん?」
「弱って無防備でいる和雅さんを襲うわけないじゃん」
「そっか、そうだよな」
「ただ…………お返ししてあげたかっただけ、です」
再会してからずっと生意気なそぶりばかりの俊介が、顔を背けて赤面していた。
「お返しって?」
「小さい頃、よく風呂に入れてもらってたから……」
「ああ、そんなこともあったよな」
満保が不在がちになっても、俊介を放っておくことはできなかった。
俊介は年の割にしっかりしている子どもだったが、やはり寂しかったのだろう。一緒に風呂に入るときは、とてもうれしそうにして、保育園であったことや習った歌などを教えてくれた。
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