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「すごく感謝してる。あのときクソ親父がいなくても寂しくなかったのは、和雅さんのおかけだから」
「まああれは、必要に迫られただけだから……」
「それでもっ! それでもうれしかった。和雅さんが好きなのは親父なんだから、俺のことなんて関係ないって突っぱねることだって、できたはずなのに」
「ま、それができない男だってわかってたから、あの人も自分ちに住まわせてたんだろ? きっと」
都合のいい男にされていたこと。満保とつきあっていたときから、別れてもずっと思ってきたことで、相田の頭の中では何度も反芻してきた。誰かに話す日が来るとは思っていなかったが、淡々と吐き捨てると俊介が驚いている。
「ホント、自分の親父ながら……ごめん」
「そんなの……今更だし、オマエは悪くないだろ」
申し訳なさそうな顔をされて逆に相田の方が驚いた。笑って頭をぐしゃぐしゃとなで回す。
「やーめろって!」
「ナリは生意気でもやっぱり子供だな。今は都合のいい男だったってことくらいわかってるから、気にすんなって」
別に未練があって引きずっているわけでもない。
あの頃はとても傷ついたし、一生立ち直れないかもなんて思ったりしたが、人はずうずうしくなるもんだ。これも人生経験だと今は割り切っている。
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