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 雑多な街――。  相田の店の周囲にも、いくつもの風俗店がある。それ以外にも商売をしている人や、外国人も多い。  様々な事情を持つものに対応するためには、認可保育園ではカバーしきれない部分があるのだと、園長が話していたのが印象的だった。 「すぐ近くだし時間も大丈夫です。和雅さんこそ、こんな朝にめずらしいですね」  昨日からのスケジュールをざっと話すと「それは大変でしたね」と俊介に労われた。 「オマエはいつもこのくらいの時間なのか?」 「仕事が不規則なのでなかなか難しいのですが、可能な限りは今ぐらいに保育園へ預けています」  悠成に送る俊介のまなざしは慈愛に満ちていた。まさに父親のそれであることに深く感心し、勝手なもので、同時に少し胸が痛くなる。 「そっか…………大変だろうけど頑張れよ」 「和雅さんっ!」  複雑な思いを悟られたくなくて早々に立ち去ろうとすると、俊介に引き留められた。 「あの…………今日店に行ってはだめですか?」  どう答えていいか迷っていると、さらに必死な声が続く。     
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