きっと僕らのその先は

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「馬鹿にしないでよ・・」 「お前飲み過ぎだって、ほら水飲め」 涙を流しながら明科の胸倉を掴んで揺さぶる志のに、その微弱な力に余裕を見せながら水を差しだすも動きは止まらない。 自暴自棄になった志のの沸点がどこで急上昇したか全く見当が付かない明科はその揺れが少しでも早く小さくなることを切に願った。 周りの視線はほぼ無くなっていて、恥じることも何もなかったがそっと確認して腕時計の針は既に1時を回っていた。 「私が、ダメなのか・・な」 「あ?」 「私がいけなかったのかな。浮気を許せなかった私が・・」 皺になった襟元をさらに強く握ると同時に収まった揺れ。そのまま俯いてしまった志のの涙は床とほんの数滴だけ明科の膝にかかる。 飲んだお酒が涙になって出てきてるのではと疑う程に膝に落ちた雫の熱さを感じながら、明科は片手間に持っていた水の入ったグラスからそっと手を放した。 「馬鹿みたい・・だって、私、許すとか・・許さないとかそうじゃなくて、ただ・・」 「いい加減にしろ」 「・・・え」 片方だけ冷たく体温の下がった手で志のは無理矢理と言わんばかりに肩を押され真っすぐ前を向かされた。 項垂れていた身体はいきなり起こされた衝撃に驚き、流れる涙はそのままに目の前をチカチカ震えさせる。 人一倍大きな声が響いて明るくなった志のの視界に今度は明科の顔は映らなかった。見えたのは明科の頭頂部。 「お前は馬鹿だよ、それくらい知ってる」 「あ、かし・・な?」 「お前が今何で泣いてるのかも大よそ検討は付いた」 驚きで声が上手くでない志のを無視して明科は話すことを止めない。 グラスを握られていた左手があたる肩が徐々にその冷たさを認識して、志のの体温で逆に温まり始めた。 「お前が何で今日酒に走ったかも大体わかった」 「・・」 「でも、お前が泣く意味は全くわかんねえ」 大きな動きと一緒に明科は顔を上げた。 その表情は何処か怒っているようにも見え、どこか悲しそうにも見え。 入社式でみた似合わない笑顔とは裏腹なのに、志のの目にはあの日感じた少しの喜びに似た何かが心をくすぶった。 「泣く暇があるなら、俺に噛み付いてろ。くだらない恋愛ごっこで泣くくらいなら俺と喧嘩してろ。そんな事でお前の価値を下げるな」 「・・明科」
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