クリハラ

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クリハラ

「綾火くんって趣味は何なの?」  昔、介護をやっているときに先輩から聞かれた。  名古屋市内にある有料老人ホームだ。優良かどうかは不明だ。  完璧な人間が揃っている。《お世辞でもなんでもないよ?(^O^)》  「音楽です、バンドやってるんです」 「バンドなんかやってていいの?」 「親によく言われます」  クリエイティブなことってな~んかバカにされるよね?例えばモノカキとか。 「小説なんか書いてる暇あるの?」  本業の人もいるだろうに。  クリエイティブハラスメント、略してクリハラ。  そりゃあ介護は大変だよ。たった3ヶ月の派遣だったけどさ?オムツ換えながら、食事用意するんだから。中にはオムツの綿を食べちゃう御老人もいた。異色ってゆーんだ。 「綾火ちゃん、ここは異食…………異色だと特殊って意味になっちゃうわよ?」  マネージャーの上原さんが言った。  クセっ毛のオネエ系だ。 「あ?ゴメンね?確かに異色よね?」 「綾火ちゃんだって事故とかで頭ぶつけたらそーなっちゃうのよ?」  異色は精神的に病んでる人もなる。  ワタシも石鹸とチーズを間違えて食べたことがあった。一時期、ノイローゼになったときがある。  アイドルだって人間なんだ。  だからさ?キムタク2号には親近感を覚えた。  SMAPだと近寄りがたい、握手するだけでグッズ買って並ばないといけない。  高貴な掌だこと。  黄金の掌…………ゴールデン・ハンド。 『自叙伝でも書いてファンを増やせば?』 1月の終わりに上原さんからアドバイスをもらった。ご当地アイドルはツラいよ!  AKBがズカズカ地方にまで入って来やがったせいで商売あがったりだぎゃあ!  今までは本なんか読んだことがなかったが、自叙伝を書くようになってから本屋で立ち読みする機会が増えた。  藤原伊織の『テロリストのパラソル』は面白かったな。新宿を舞台に爆弾テロが起きる。  故人なので経緯を聞くことなど出来ない。  ホットドック屋のシーンは印象的だ。  大沢在昌の『アルバイト探偵』には親近感を覚えた。ワタシも派遣で散々苦労したからな?  ジェットコースターでの拷問なんてヒヤヒヤだ。  ゴールデン街に深夜プラス1って店があるらしいから今度行ってみよう。龍が如くな世界だな?  上原さんに小突かれた。 「ボーッとしてんじゃないわよ!」
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