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ムッシュ大和魂
俺はことの経緯をジャッキー・チェンのそっくりさんに話した。
「なるほど、疑ってゴメン!上原さんの早とちりね、あの人綾火ちゃんの親がわり、だから心配」
綾火って天涯孤独だったのか?
「いえ、こーゆー時代だから疑心暗鬼にもなるわな?大須で面白いところってある?」
「コメ兵に行ってみな?」
窓の外をテンガロンハットの男が通り過ぎる。
ベースアンプを押している。
「ムッシュだ、あの調子じゃ客から文句言われたんだな?」
ムッシュ大和ってゆー、ムッシュかまやつに憧れてるバンドマンらしい。
「ムッシュっていやースパイダースでしょ?」
「お?知ってるねぇ?マチアキ、井上順、大野克夫エトセトラ」
大野克夫は『太陽にほえろ!』のサントラ作ってる人だ。裕次郎がブラインドを指でこじあけ、眩しそうにしている…………そんなシーンがあたまをよぎるよ、夜霧よ今夜もありがと~う♪
「ツツモタセとアイドルってのは似てるよな?」
店に入ってくるなりムッシュ大和が言った。
「何がいーたいんだ?」
ジャッキーがアンプを押すのを手伝ってやる。
「友達が詐欺にあったんだ、綾火になりすましてる奴に金をぼったくられた」
「そりゃあ災難だったねぇ?」
「綾火は握手会なんかしてないのにさ?会費5万を奪われた」
頭がいいな?派遣なんかやめて詐欺師になろうかな?ルパン三世みたくてカッコいいじゃん?
「峰不二子みたいのがいるんだな?」
ジャッキーが厨房に戻って仕込みをはじめる。
「峰不二家?社員にしますって騙して人生奪っちゃうんだろ?」
不二家でも派遣したことあるんだ。
「あんた、誰?面白いことゆーねぇ?」
俺の隣に座ってムッシュ大和が鼻の穴をティッシュで掃除した。
「ほーら、スッゴい真っ黒…………見せてあげようか?初対面の君には特別に無料で見せてやるよ」
「そんなもん、いらんわ!」
俺は自己紹介した。
「木村タクヤ君ねぇ、偽名みたいねぇ?」
「よく言われますが本名です」
ジャッキーさんの料理は最高にうまかった!
「大和さん、この辺で有名なカフェ知ってます?綾火ちゃんと待ち合わせしたんすよ。あ!?グリコだったかなぁ?」
「ひょっとしたら、ぶりこじゃねぇか?」
「ぶりっ子?」
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