なもなもストリート2017

ミュジック・コンクレート

　喉にイガイガ感を感じた。
　声が嗄れている。イソジンをしたい。
　大和さんに地図を書いてもらった。
　メモを頼りにぶりこを目指す。
　大須って信号がおかしな形をしているんだよな?
　宇宙人が乗っていそうなそんな感じのする信号だ。北国の信号は雪が積もらないように、自動車用のも縦タイプが多い。津軽にいる友達が言っていた。
　テレビ愛知を通り過ぎ、若宮大通り公園に差し掛かったときスマホが鳴った。
　ないと思っていたがバッグの奥の方に入っていた。
　画面を見るとガメラって出てた。
　武崎、高校時代の悪友だ。奴は怪獣みたいな顔をしている。タップしてスマホを耳に当てた。
「どうした?シンゴジラにでも襲われたか?」
《そんなこと聞いてる暇ない!》
「何だ?いきなりかけてきやがって!」
《沢山が入院した》
　俺、武崎、沢山の3人は最凶のトリオだった。
　敵の校舎に乗り込み20人って気が遠くなりそうな数と戦ってボロ負けした。
　去年、ドライブに出かけたばかりだ。
　浜松にある、ウナギパイの工場を見学(夜のお菓子ウナギパイって意味深なキャッチフレーズだ)したり航空基地を見たり、B級グルメめぐりをしたり。富士宮の焼きそばはメチャクチャうまかった。
「マジかよ!?」
《ガンで長くないらしい》
　唖然とした。涙が溢れた。
　沢山は館山にある病院に入院してるらしい。
　南総里見八犬伝の舞台になった場所だ。
「今日は行けそうにないや、名古屋にいるんよ」
《名古屋に?何で?》
「星山綾火って知ってる?」
《なんたらオーガニックの奴だろ?》
「今度セッションするんだ」
《音楽なんてやってないでマトモな仕事しろ》
　電話が切れた。感じが悪いな!
　沢山、死ぬんじゃねぇぞ!?
　沢山はシェフェールが好きだった。
　シェフェールは電子音楽の先駆者だ。
　ミュジック・コンクレート〈具体音楽〉ってジャンルを発展させた。レコードやテープに録音された音をさまざまに繋ぎ合わせ、回転数を変えたり、逆転回転させて曲を構成する。
『騒音のためのエチュード』は名曲だ。
　ちなみにシェフェールはフランス出身の電気技師だ。第2次世界大戦後にしては洗練されていた。
　ドイツのシュトックハウゼンも同じ部類だ。　
　ビートルズはシュトックハウゼンの影響を受けている。
　いけねー!早く、綾火ちゃんに会わなくちゃ!