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窓から差し込む朝日が顔を照らす。
彼の朝はいつもそこから始まった。眠い目を擦りグーっと腕を伸ばして背伸びする。
重い身体を起こしてベッドから出た彼は洗面所へ向かいバシャバシャと顔を冷水で洗い流した。
彼の名前は天谷 輝(アマヤ テル)。
卒業まで残り一年を切り就職活動に精を出す青年だ。
今日は彼にとってとても大事な一日である。
「書類よし。レポートよし」
洗面所から戻り机の上にある持ち物を入念に確認。
彼にとって今日は第一志望である大手スポーツメーカーの面接である。
なので入念に持ち物を確認して万全で望もうとしていた。
スーツに着替え身なりを整えた彼は書類等を詰め込んだビジネスバッグを手にアパートを出た。
「もしもし舞。今から面接行って来る! それと近々そっちに帰省するから待っててくれよ」
「わかった。面接頑張ってね。私は今から講習あるから帰省する日程決まったら教えてね!」
「わかった。それじゃな」
受話器の向こうから聞こえて来る声に輝の引きつっていた顔が少し緩んだ。
歩きながら輝は愛しい恋人に電話で報告を済ませる。
遠距離恋愛をしているからこそこの随時の報告を彼は欠かさずに恋人にしていた。
駅に着くと人込みが激しい。電車の中は満員で人の波に押しつぶされそうになる。
いわゆる出勤ラッシュというものだ。
「はぁ……」
この光景に輝の口から出るのはか細いため息。
今からこの満員電車の中で押しつぶされるとわかっているからこそ気が滅入ったのだろう。
電車に乗ると早速出勤ラッシュの洗礼を受けることになった。
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