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「成瀬さんも一緒に来てるかな」
そう言って相原君を見上げた梨香ちゃんが、突如相原君の脛を蹴り飛ばした。
「あだーっ!なんで?」
「ヘラヘラしてんじゃないよ」
「成瀬ちゃんのことでヘラヘラしてたんじゃないって」
今でも梨香ちゃんはたまに成瀬ちゃんにヤキモチをやく。
それがまた可愛いのだ。
「こっち向いてよ、梨香ちゃん」
ソッポを向いた梨香ちゃんの腕を引っ張っていると、並ぶのに飽きたのか、列から外れて遊んでいた幼稚園ぐらいの男の子が寄ってきて相原君を見上げてきた。
「ん?」
日本人?
「バーーーカ」
「……」
あっかんべーをして走り去っていくガキんちょを唖然と見送る相原君の隣で、梨香ちゃんが腹を抱えて笑っていた。
「子供にも分かるんだね」
「違うよ。バカップルって意味だよ」
たぶん美女といちゃつく格好いいオトナのお兄さんに嫉妬したに違いない。
そう考えることにして、とりあえず梨香ちゃんの機嫌が直ったことに満足した。
「男の子、可愛いよね。あんな子供いたら楽しそう」
逃げていくガキんちょを目を細めて眺める梨香ちゃんは、妊娠できるかな、とたまに不安を口にすることがある。
早く孫を!なんてコワモテことお義父さんは言わないけれど、梨香ちゃんも三十路だし、親からのプレッシャーがあるんだと思う。
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