第3章

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すぐにでも先輩を連れて立ち去りたかったけど、これから部下になる深沢さんに失礼なこともできない。彼女に罪はないんだから。 「米州部の篠田です。よろしく」 先輩に逃げられないよう腕は掴んだままだ。 「あっ、ふっ、深沢です!」 なぜかひどく怯えられたけど、今はそんなことどうでもいい。 「じゃ、急いでますので僕達はこれで。お疲れさまです」 「え、急ぐって?…あの」 先輩に余計な口を挟む暇も持たせないよう、すぐに腕を引っ張って歩き始めた。 背後からは片桐カップルの声が聞こえたけど、構わず細い路地に入る。 「ちょっと!どこに行くつもりなの?」 先輩のヒールの音がもつれて乱れた。 「どうして引っ張るの? もう少しゆっくり歩いてよ!」 「……小椋と三人で飲みたいんですか?モタモタしてるとそうなりますが」 理由は小椋だけか? …違う。 課長に奪われたくないからだ。 そして、これ以上片桐主任を見て欲しくなかったから。 何より、俺がそんな先輩を見ていられなかったからだ。 だったら、憎々しげに俺をなじる先輩の方がいい。
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