第3章

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先輩はしばらく黙りこんでいた。 でも、行き先も告げず強引に進む俺の背中を睨みつけているのが分かる。 何度目かの角を曲がり、もう誰にも見つかることのない場所まで来て、ようやく足を止めた。 「逃げたかったんでしょう? あの二人から」 逃げたかったのは俺だ。 先輩を苦しめるすべてから。 先輩がじっと俺を見上げた。 まともに視線を合わせたことなんて今までなかったかもしれない。 大きな瞳で俺の心の奥を探るように見つめる先輩に、抑えつけてきた感情が膨れ上がりそうになる。 でも、多くは望まない。 今、願うのは一つだけ。 「うん……」 それだけでいい。 気まぐれでもいい。 手の中に彼女の腕が柔らかく寄り添うのを感じながら、今度はゆっくりと歩き始めた。
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