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先輩に対する小椋の暴言に制裁を加えるのにも丁度いい。
「悪い。もう電車乗ってるから」
聞いてないフリをしていた先輩がギョッとした顔でこちらを振り向いた。
そんな顔を見ると妙に愉快になる俺は相当歪んでいるらしい。
『うそ!なんでー?
約束したじゃん!ねぇ、今から』
「またな。二次会楽しんで」
『えっ?やだ、ちょっと篠…』
小椋の絶叫も構わず電源を落とすと、何食わぬ顔で携帯を仕舞う。
小椋には悪いけど、ゾンビ気質の奴だから、ここまでやっても不死身なのだ。
「……嘘が上手ね」
「どうも」
しばらく唖然としていた先輩が唸るように言った。
「小椋さんと約束してたわよね?
いいよ、って」
「俺は約束してませんよ。
向こうはしたかもしれませんが」
「それって…」
そう。
最初から応じる気なんてない。
先輩は知らないだろう。
それが先輩のためだって。
俺の自己満足だ。
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