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だけどあまり過剰に憤慨すると俺の本心を晒すようなので、極力おとなしめに抑えた。
「男が女を手懐けるのと女が女を操縦するのは次元が違いますよ。
そこは部長に反対です」
男女の仲も仕事もごった混ぜの発言には一切同調できない。
「…ありがとう」
俺の控え目な援護でも役に立っただろうか。
彼女は寂しげな表情を少し緩めて微笑んだ。
「こんなことで落ち込むなんて、
私、少し疲れちゃったのかもね」
密かに広がりつつある片桐主任婚約の噂の中、先輩は毅然と顔を上げていた。
いつかまた折れてしまわないかとハラハラする。
そう言いながら俺も散々苛めたけど。
「…時々、逃げ出したくなるの」
不意に彼女が漏らした一言に、切羽詰まったものを感じて息を呑んだ。
けれど何か言葉をと思った時、携帯の呼び出し音が響いた。
「…すみません」
電話の主は部長。
タイミングの悪さに溜め息が漏れる。
十中八九、何かやらかしたに違いない。
米州部長は人情味があるいいおっさんだけど、始終ドジを踏むのだ。
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