第4章

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「……小椋のことですけど」 店を出て路地を戻りながら口を開いた。 せっかく抜けたのに、まだ先輩の役に立つようなことを言えていない。 「勢いはいい奴だから、味方につければいい方向に働きますよ」 「味方にって…無理よ」 「正攻法で駄目なら、アメとムチで」 同期として近い場所から小椋を見てきた限り、小椋はおだてると狂喜して働く。 「ご機嫌を取れと?」 「いや。ただご機嫌を取るんじゃなくて、例えばアメに薬を入れるとか。自発的に頑張れる薬を」 ブタもおだてりゃ木に登るって言うし。 失敗して落ちるのを待つのもよし、さりげなく助けてやって恩義を売るもよし。 「アメに薬、ねぇ……」 彼女は納得がいかないらしく、思案顔で夜空を仰いでいる。 俺の肩を少し越すぐらいの背丈。 薄暗い街灯の光を受けてきらきらする大きな黒い瞳が綺麗だった。
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