第4章

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「いいですけど…。 鏡なくて大丈夫ですか?暗いし」 「リップだから平気よ。 でも、あっち向いててね」 「どうして?」 「塗るの、見られたくないもの」 泣いて腫れ上がった顔も寝起きの顔も素っ裸も全部見たんだから、リップを塗るところなんて比にもならないのに。 「はいはい」 妙なところで女子の恥じらいを見せつつ命令口調の女王様に苦笑いしながら背を向ける。 しばらく待っていると、女王様から見てもよしとお許しが出た。 「もうこっち向いていいわよ」 「ほんと、態度が女王様ですね」 「……あ。本当、甘いわ」 苦笑いしながら振り向くと、彼女が嬉しそうに笑いながらペロッと唇を舐めた。 女がよくやる、男の気を引く仕草。 特に小椋はしょっちゅうだ。 呆れるだけで、そそられたことは一度もない。 だけど先輩には何の計算もなくて、それが逆にぐっときた。 でももし計算だったとしても同じだっただろう。
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