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「嫌な味じゃないですか?
外国製品だからそこら辺が怪しいなと」
唇に集中してしまいそうな視線を引き剥がし、冷静な会話で気を逸らす。
「ううん、美味しい。
味、知らないで買ったの?」
「こんなの、男が試してたら気色悪いじゃないですか。
店に居るだけで微妙だったのに」
「アメリカなら何でもありじゃない?ゲイ多いし」
そう言って悪戯っぽく笑った先輩に苦笑いを返した。
化粧品店には、男が居ると思えばカマ臭い奴ばかり。
そいつらが向けてくる湿っぽい視線を避けながらの品物選びを思い出すと身震いする。
「まあ、不味くなくてよかったです」
でも男はこんな風に喜ぶ顔をもう一度見たくて、何度でも繰り返してしまうんだろう。
気安さを越えない、小さな土産。
高価な物に慣れているはずの彼女が、こんな小さなリップでこんなに幸せそうな顔をするなんて思っていなかった。
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