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二度目の夜から10日余りが過ぎた。
あの翌週からのアメリカ出張を挟み、今日が出張明けの出社日だ。
しばらく彼女から離れる機会を得たけれど、混迷は相変わらず。
彼女に本気になるまいと思うのに、二度も触れてしまえば複雑だ。
現に、頭を冷やすはずのアメリカで、つい彼女への土産を買ってしまう始末。
机の下の鞄から覗く小さな包みを見下ろしながら自分に呆れる。
出張土産なんて職場まとめて大箱のチョコを配るぐらいだ。
いちいち個別に、まして彼女に買ったことなんてある訳ない。
「どう考えても不自然だな…」
自嘲的に呟いた独り言に、横で喋っていた小椋が反応した。
「えー、みんなは誉めてくれるんだけど」
お前の話じゃない。
うんざりして小椋を眺める。
「篠田君はこれ、嫌い?」
いったい何の話だ。
「…別に。いいんじゃない?」
「よかったぁ!嬉しーい」
「…アジア部、あと三十分でミーティングだろ」
朝から入り浸る小椋を追い払い、正面の席をチラ見する。
いつも通り、凛とした女王様は俺と小椋がどれだけ喋っていても興味無しだ。
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