第4章

5/28
前へ
/28ページ
次へ
*** 「ねー篠田君、ご飯行こうよ」 「今日は無理。残業だから」 「じゃ、明日は?あさってバレンタインだしさー、だから」 「明日も明後日も無理」 「えー、いいじゃーん」 定時を過ぎる頃からずっと小椋が張り付いているせいか、帰りそうな気配を見せている先輩からなかなかメールが来ない。 「いつか行こうよー」 「……じゃ、再来週かな」 「ほんと?約束だよ!」 ようやく跳ね跳ねしながら立ち去る小椋の背中にボソッと呟く。 「…同期会、だけどね」 再来週の金曜は同期会の予定。 集団だって、一応食事だ。 「つれないなぁ、篠田君」 横で聞いていたらしい羽鳥課長が、小椋が消えると笑いだした。 「小椋さんじゃダメなの? 篠田君、彼女と別れたんでしょ」 思わずパソコンを打つ手を止めてまじまじと課長を見た。 「どうしてそれを」 「不幸な匂いには敏感なんだよ」 言い返そうとしたところで社内メールの着信に注意が逸れ、会話はそこまでだったけれど、課長の鋭さには時々驚かされる。 「…早めに食事休憩入ります」 先輩の退社から間を開けて席を立ったけど、用心しないと課長なら見破りそうだ。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1446人が本棚に入れています
本棚に追加