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「ねー篠田君、ご飯行こうよ」
「今日は無理。残業だから」
「じゃ、明日は?あさってバレンタインだしさー、だから」
「明日も明後日も無理」
「えー、いいじゃーん」
定時を過ぎる頃からずっと小椋が張り付いているせいか、帰りそうな気配を見せている先輩からなかなかメールが来ない。
「いつか行こうよー」
「……じゃ、再来週かな」
「ほんと?約束だよ!」
ようやく跳ね跳ねしながら立ち去る小椋の背中にボソッと呟く。
「…同期会、だけどね」
再来週の金曜は同期会の予定。
集団だって、一応食事だ。
「つれないなぁ、篠田君」
横で聞いていたらしい羽鳥課長が、小椋が消えると笑いだした。
「小椋さんじゃダメなの?
篠田君、彼女と別れたんでしょ」
思わずパソコンを打つ手を止めてまじまじと課長を見た。
「どうしてそれを」
「不幸な匂いには敏感なんだよ」
言い返そうとしたところで社内メールの着信に注意が逸れ、会話はそこまでだったけれど、課長の鋭さには時々驚かされる。
「…早めに食事休憩入ります」
先輩の退社から間を開けて席を立ったけど、用心しないと課長なら見破りそうだ。
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