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「元はというと篠田君のせいよ」
「俺に直接関係ないんでしょう?
で、先輩は何と?」
「…能力もやる気もない人間は、せいぜいしがみつく男でも漁ってなさいって」
彼女は膨れた顔のまま、まるでイタズラを白状するガキんちょみたいに決まり悪げにボソボソと呟いた。
その様子が可愛くてまた笑いながら、強く惹かれてしまうのが怖かった。
これ以上彼女に触れたら、自分をコントロールできなくなる。
そんな俺の葛藤の隣で、ようやく彼女は悩みの核心に言及した。
「上司失格よね。
……部長から注意を受けたの」
「部長の耳に入ったんですか?」
「米州部に異動したいと小椋さんが申し出たらしいの。
上司と合わないって。私のこと」
それから彼女は部長から受けた叱責の内容をポツリポツリと話し始めた。
その内容は納得する箇所もあったけど、彼女に酷な発言もあって、傷ついた彼女の横顔はひどく寂しげだった。
俺みたいな相手に吐き出すしかないほど、彼女は孤独だった。
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