第5章

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「……おはようございます、片桐主任」 さっさと役目を果たして去ろうと、先輩には目を向けず挨拶する。 「ああ篠田君、久しぶり。 今、米州部忙しいんだって?」 「羽鳥課長が探してましたよ、片桐主任を」 片桐主任には申し訳ないけど、世間話をする気分ではなかった。 「え、本当?行かないと」 でも彼は俺の素っ気ない態度を気にする風もなく、慌てて腰を上げた。 これで用は済んだし、俺も彼に続いて戻るはずだったのに、出口際で振り向いた彼と先輩のやり取りを聞く羽目になった。 「そうだ。今晩、空いてる? 経企室の飲み会があるんだけど」 「ああ…今晩はダメなの」 「そっか。また声かけるよ。 じゃ、後でね。 篠田君、ありがとう」 彼の足音が遠ざかると、休憩室に沈黙が広がっていく。 “今晩はダメ” 課長と約束でもしたのだろうか。 でも、視界の隅で先輩が気まずそうに身じろぎしたのを見て、掻き回したい衝動をかろうじて抑えた。 「…篠田君。 あの…小椋さんのことだけど」 けれど、彼女が口を開いた。
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