第5章

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*** その日は最近続いていた現地待ちの案件もないので、就業規則通り早めの退社となった。 とはいえ、普段通り持ち帰り残業は鞄にぎっしり詰まってるけど。 こんな憂鬱な時は仕事に没頭するか酔っ払うに限る。 だけど中野の誘いは勘弁だった。 「篠田、飲みに行かね?」 「あー、今晩はダメだな」 別に用はないけど、先週散々な目に遭ったばかりだから当分御免だ。 すると中野はがっくりと肩を落とした。 「相原でも誘うかな…」 「あいつはやめとけよ。新婚だし可哀想だろ」 「可哀想じゃねぇよ。新婚だし」 理屈が真逆だけど中野にはそうなるらしい。 男にもタイプがあって、俺みたいに孤独が好きなのもいれば、中野みたいに孤独にめっぽう弱い奴もいる。 「小椋でも誘えば?」 「あいつ、篠田がいないと来ないだろ」 「途中までなら俺も付き合うよ」 「そうか?!」 萎れた中野が途端に元気になった。 「おーい、小椋ぁ!」 走っていく背中を見送りながら苦笑する。 男って情けない生き物で、失恋の寂しさを埋めるのはやっぱり女の温もりがいいらしい。 それが小椋ってのは、俺には有り得ないけど。
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