第5章

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翌週は海外の重要な取引先のアテンドで、羽鳥課長と二人揃ってずっと外出ばかりだった。 あの日の先輩との食事のことが気になるけど、当の課長はいつもと変わらず涼しい顔で、まったく腹の中が読めない。 ただ一度だけ、顧客と一緒でない時のコーヒーブレイクで先輩のことを訊かれたことがあって、それが妙に不自然に思えていた。 『篠田君はどう思う?』 雑談が途切れた時、課長がコーヒーの缶を揺らしながら何気ないふうに切り出した。 『もしアジア部から亀岡さんが抜けたら、どうなるだろうね』 『……亀岡主任、異動するんですか?』 『いやいや、単純な疑問。 もし彼女が仕事を辞めることになったら、アジア部は誰を大黒柱に据えるんだろう、とね』 『……高畑ですかね』 『うん…高畑君あたりだろうな』 課長の質問はそれっきりだったので、余計に気になってくる。 『なぜそんなことを?』 『まあ、迷う年代だからね。彼女、仕事の相談とかしてこない?』 『いえ。…亀岡先輩とは接点ないですから』 『…そう』 そこで話題は終わった。 だけど長年課長と行動してきたから分かる。 この問答には意図がある、と。
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