第5章

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息の根を止められたように、しばらく口がきけなかった。 茫然とした後、ようやく自嘲とも怒りともつかない感情が込み上げてきた。 昨夜は、図らずも寝てしまった男への縁切りの餞別だと? 結局、俺達の関係は最初から何も変わっていなかったってことだ。 昨夜すっかり忘れ去っていたあの男の存在を、俺はやっぱり越えられない。 「結局、そういうことですね」 彼女の肩を放した。 今後はもう二度と触れることはないんだろう。 「…どこに行くつもりですか?」 「……家に」 「そうじゃない」 答えをはぐらかす彼女に苛立ち、一番聞きたくないことを尋ねた。 「課長ですか?」 俺は未練がましく否定を望んでいたのかもしれない。 苦し紛れの悪あがきだった。 だけど、返ってきた答えは、俺にとって肯定をはるかに越える残酷なものだった。 「……忘れさせてくれる所に」
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