第5章

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コーヒーでも買いに行くのか財布を手に席を立った彼女の背中を見送りながら、どうにもならないことを考えるのはやめようと気分を切り替える。 しばらく仕事に集中していると、羽鳥課長が小走りに席に戻ってきて何か資料を探し始めた。 「あれ?おかしいな…どこいったんだろう」 「手伝いましょうか?」 「あ、大丈夫。 それより片桐君、見なかった?」 「いえ。……この部屋にはいないみたいですね」 さっきミーティングルームから出てきた姿はチラリと目にしたけど、大部屋にその姿はない。 「悪いけど、そこらへんにいるはずだから呼んできてくれるかな。 席を外してもらったんだけど、深沢さんじゃ分からないことが多くてね」 「分かりました」 「篠田君も忙しいのに申し訳ない」 「いえ」 少しの席外しなら休憩室だろう。 見当をつけて廊下に出ながら、ふと先輩がまだ戻ってきていないことを考え合わせて嫌な予感がした。 その予感は当たっていた。 休憩室からは先輩と片桐主任の親密そうな会話が廊下にこぼれてきていた。
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