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「課長と今夜会うんですか?」
俺が一歩近づくと、彼女は俺を睨みつけながらも一歩後ずさった。
「片桐主任のせいで、あの夜あんなに泣いて違う男に抱かれたくせに」
「大きな声で言わないで」
別に大きな声なんか出してない。
隠滅したいことを言われたから耳が痛いだけだろう。
「それに今晩は違うわ。
相原さん達と同期会だから」
一歩、もう一歩。
彼女はもう目の前だ。
「課長に何を言われたんですか?」
課長を本当に好きになれるなら、それでいいと思う。
だけど身代わりでしかないなら、今までと同じことの繰り返しだ。
見送る俺も、それじゃ終わりにできない。
「言えないようなことを?」
彼女の唇に触れ、指でなぞった。
甦るのはキスの甘い感触。
「もう味見させたんですか?
…課長にも」
彼女を忘れられずに苦しんだ男は多いはずだ。
彼女はそれを分かっているのだろうか。
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