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仕事上のアドバイスをすることはあっても、先輩がプライベートを誰かに語ることはとても珍しいからだろう、中野が突っ伏していた顔をあげた。
「知っての通り、片桐君と私は長かったけど縁がなかったわよね。
でも、かなり引きずったけど、もう完全に過去にできたの」
彼女の静かな声が、あの日以来ぽっかりと口を開けていた胸の中の空洞に染み込んでいく。
そうだ。
俺の願いは叶ったんだ。
いつからなのか最初は自覚もなく始まった、彼女が救われる日を願い続けた数年間は終わった。
「だから中野君もきっと、ね。
まだ若いんだから、これからよ」
「若い…っすかね俺…」
「しっかりしてよ、もう!
つか俺若いっすかね、て先輩に失礼じゃん。先輩はどうなるのよ」
「お前の方が失礼だろ女王様に」
「どうでもいいよ。
早くその顔ふいて帰ってよ」
またもや始まった小椋と中野の喧嘩に呆れつつ、この二人はこれでいいんだなと思う。
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