第6章

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だけど、あの日以来初めて先輩と視線を合わせた一瞬はすぐに小椋に邪魔された。 「えーやだ!私もついていく」 「俺一人かよ!んじゃ俺も行く」 「いや、お前らはここにいて」 「やだ、篠田君すぐ逃げるもん!」 そして結局、こうなるんだ。 「オレ、甘いもん食いたなった」 「あたしもー!次どこ行く?」 数歩先で騒ぐ中野と小椋の背中を恨めしく眺めながら路地を歩く。 あれから揉めた末に全員で店を出る羽目になり、今は四人でぐちゃぐちゃだ。 「…ごめんね。私が帰るって言ったから店替えすることになっちゃって」 「いえ」 俺の一歩後ろを歩いていた先輩が済まなさそうに言った。 何とか話を切りだそうと口を開きかけた時、中野がくるりと振り向いた。 「次、また篠田んちでいいか?」 「それはパス」 「えー、行きたい行きたい!」 小椋も加わってきて、もはや二人きりの会話なんて絶望的だ。
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