終章

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扉の中のアレ……もしかして寝室の棚の中にある、あの箱か? いや、あれは仕方ないだろう。 土壇場でコンビニに走るのはいただけない。 まさか、かなり減ってるのがまずかったとか。 「心当たりないの?」 まったく見当違いなあれこれを頭の中で散らかしていると、彼女が洗面台を指差した。 「その扉の中よ」 「そんな所、大したもの入ってませんよ。……ほら」 拍子抜けしながら右の扉を開けて見せると、中にはシェーバーとドライヤー。 「その扉と違うわ。真ん中よ」 「真ん中なんて、ほとんど使ってませんが。……えっ?」 真ん中を開けると、何かの景品でもらったきり忘れていた洗剤。 ……だけではなかった。 棚の中央に押し込まれていたのは、ド派手なピンク色の、誰がどう見ても明らかに女物と分かるポーチ。 「なんだこれは……」 完全に全機能停止した俺の横顔に彼女の強烈な嫌味が刺さった。 「そこ、他の人が使ってるみたいね」 「ちがっ、知佐のじゃな…」 思わず口走りかけたのを途中で止めようとしたけど遅かった。 「…知佐?」 先輩の綺麗な弓形の眉がピクリと上がった。
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