終章

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「こってりしたものが食べたいの。もうお腹ペコペコ」 「じゃあピザで。注文してきますけど、好みは?」 「色んな味が食べたいからクォーター」 「それじゃあクォーターから適当に頼みますね」 もう一度唇と胸元にキスしてからバスタオルで彼女を包んでやり、先に洗面所を出た。 それから具合よく数日前に入っていた宅配ピザのチラシを手にリビングで電話していると、彼女がバスタオル姿のまま入ってきて隣に腰掛けた。 ムッツリなのか、さっき裸を見たばかりなのにタオルの裾から伸びるしなやかな脚に気が散って仕方ない。 傍らにあった眼鏡をかけてごまかした。 「……初めてなの?」 「何がですか?」 電話を終えると、彼女が上目で尋ねてきた。 「ピザ頼むの。電話番号の登録から始めてたでしょ?」 「ああ…初めてですよ」 すると彼女はすごく嬉しそうに笑った。 「篠田と私の初めて、一つできたわ」 「ピザぐらいで?」 「いいの」 これまでに他の誰かとこんな状況がなかったことを喜んでいるらしい。 知佐の部屋で時々あったことは、黙っておくことにする。
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