その奇妙な予感は

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その奇妙な予感は

 その桜を見て、久恵は目を丸くした。  深夜の、会社帰りのことであった。  普段ならもう少し早く家路に付くのだが、会議やら会食やらが立て続けに入り、気付いたら終電を逸していた。別の路線ならば、まだ電車が出ている。タクシーを使うことも考えたが、節約を命じている立場である。自らが破るわけにはいかないと思い直した。  それで、歩いていたのである。  普段通らない道を、新鮮な気持ちで歩いていた久恵は、ふと立ち止まった。道の端に見慣れぬ明かりを見つけたのである。  花屋のようであった。家と家との間に、緑が生い茂っている。ポトス。アイビー。テーブルヤシに、ベンジャミン。異国情緒溢れたラインナップに、煌々と明かりが降り注ぎ、そこだけ植物園のような有様である。  腕時計を見ると、深夜の零時を回っている。  コンビニやスーパーならばいざ知らず。こんなに遅くまで開けている花屋など、聞いたことがない。  興味を覚えて、近寄ってみた、その軒先に。見つけたのである。  桜の鉢植えであった。久恵が両手で抱えられるほどの鉢である。     
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