桜が告げるもの

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桜が告げるもの

「桜が見れるのも、今年で最後かな」  嫌に大きく聞こえる心臓の音を聞きながら病室のドアを開けると、ヘッドボードを背もたれにして、窓辺の白いベッドに座る加奈が顔をあげた。目と目が合って数秒、ふいに彼女は窓の外へと視線を外してぽつりと言った。 「またみんなでお花見、したかったんだけどな」  窓から外を眺める目は細められ、表情は暗い。最後にメールで話したのは3日前。顔を合わせたのは2週間も前だ。その時までいつも通り元気に笑っていた加奈の様子からは、考えられない変わりようだった。 「そんなに、悪いのか……?」  昨日から入院していると聞いたのは、今日偶然大学で会った葵からだ。話もろくに聞かずに慌てて来てしまったため、理由も何も聞いていない。 「あれ、葵から何も聞いてないの?」  窓の外を眺めていた顔がこちらを向くと、驚いたように目を丸めている。 「昨日入院したって、それしか聞いてなくて。慌ててたから……」 「そうなの? ごめん、ただのエイヨウシッチョウ」     
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