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「演技だって分かってないと、ほんと心臓に悪いよな」
「いやー葵からきたメール『水原君これから病院に行くよ』だったから、てっきり理由も全部話してあるんだと思ってねぇ。あまりにも本気の返しだったから驚いちゃったよ」
「逆にそこは続けるべきだったんじゃないかと思うけどな。……まぁ続いてたら俺がなんて言ってたかわかんないけど」
「あ、それは俄然興味ある!」
加奈が目をキラキラと輝かせるので、またため息が出る。
「そんなんはいいとして。入院までしてそんなことしてるってことは、うまくいってないんだろ? さっきのでなんか思いついたか?」
「それが全然なんだよねー」
それすらも笑いながら言えてしまう加奈は、ちょっとだけうらやましい。それこそ物語の中なら主人公が「うん、思いついたよ……!」なんて決め顔で言っててもおかしくない状況だ。自分だったら、もう本気で頭を抱えている頃だろう。
加奈が今書いている原稿は、4月の頭が締切となっている、かなり有名な大型の新人賞だ。3年前の高校3年の時に送ったものが一次選考を通ってから毎年送っているのだが、去年と一昨年は一次すら通過できていない。
「今回はもう駄目かな」
「一応締切まではあと3週間くらいあるけど」
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