女の仕事

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 窓外で桜吹雪が乱舞している。昨日の穏やかな晴れ模様から一転、強風が吹き荒んでいるのだ。  清代家の広い客間。ガラステーブルを挟んで二脚のソファが置かれている。そこに向かい合って座しているのは、二人の男性。一人は五十歳を過ぎていると見受けられ、一人はまだ二十代だろうか。漆黒のスーツを着た両名は、互いにテーブルの上に身を乗り出し、潜めた声で言葉を交わしている。 「犯人が遺体を犯行現場に放置したのは、どのような思惑からなのでしょうか」 「積極的な理由からではなく、消極的な理由から放置したのかもしれない」 「と言いますと……?」 「遺体を処理したくても出来なかったんじゃないか。被害者は大柄な男性だ。腕力がある人間でなければ、あの重さを運ぶのは難しい」  いきなりノブが回り、客間のドアが開いた。入ってきたのは、清代弥生。緑茶が注がれた湯呑みを載せた盆を手にしている。  スーツ姿の二人はソファから腰を上げ、弥生に軽く頭を下げた。彼女は会釈でそれに応じ、テーブルの上に湯呑みを置いていく。年輩の男が声をかける。 「すみませんね。婚約者に不幸があったというのに、突然押しかけた上、お茶の用意までしていただいて」 「お気遣いいただかなくても結構ですよ。犯人を捕まえるために、あらゆる人から話を聞くのが刑事さんのお仕事ですから。それに――」  話し相手に目を合わせ、穏やかに、艶めかしく微笑する。 「お客様をもてなすのが女の仕事ですから」
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