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「これは参ったよ。……総理大臣が直接命令を出す自衛隊法七十八条がダメって事は、県知事の要請による同法の八十一条も、最終的に総理の命令が必要になるから結局駄目という事になる……」
顎に手を当て、考え込む零治。
集中しようとした途端に、今度は無線の端末から音が鳴り始める。
[やっと通じた……こちら、エニアック]
「こちら、ラウンド。エニアック、無事かい?」
[大きすぎる──修正が必要だ]
ゲームキャラの台詞を真似ながら語るエニアック、そのノイズ交じりの声と共に、妙な音が聞こえている。
[要するに、機体は大ダメージ。──写真のおっさん助けたから、海の上に出て逃げてきた所]
「君と首尾のおじさんは無事?」
[俺は大丈夫、おっさんはちょっと判んない。とりあえず、今ロボの手で掴んで移動中]
「! ──相手は県知事さんだよ? もうちょっと丁重に扱ってくれないと」
[俺が見つけた時には首にロープ巻かれてて、脚立蹴っ倒されて首締まってる所だった。ブレードでロープ斬って、そのまま逃げてる]
エニアックからの報告を聞き、零治は絶句して今度は額に手を当てる。
頭が痛い問題が、また増えそうだ……。そう思いながらも、とりあえず気を取り直す事にする。
「とにかく、その人は広島県の県知事さんだから、扱いには本当に気を付けてね?」
[了解。──それが私の使命]
零治の念押しを聞いたエニアックは、真面目なのか不真面目なのか、お気に入りのゲームキャラの台詞を真似て返事を返し、通信を切った。
ブツリと無線が切れる音を聞き──
「あいちゃん──」
他には誰もいないCICの中、零治の声が静かに響く。
[はいはい、何でしょう?]
すぐに、萌えボイスが返ってきた。
「ジャミングで通信障害が起きているけど、外部アバター用のボディは大丈夫?」
[いつもの体ですか? 今、リンクが切れているので少し心配ですぅ。自律モードに切り替えているので、ちゃんと戻ってくるとは思いますがー]
「ココも、今はまだジャグリオンの中に戻っていないようだし……どうしているんだろう?」
流石に心配だ。零治はそう思いながら、天井を見上げた。
「仕方が無い、いざという時は新谷君と御蔵君に、伝令に行ってもらうしか無さそうだ……」
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