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敵はまだ活動中で油断できない。零治は呟くと、次の一手を考える為、余計な心配を頭の片隅に押しやる事にする。
[私のボディ、乱暴にされてなければいいですけど──]
零治の様子を見守りつつ、あいちゃんはCICの画面の中で首を傾げ、悪戯めいた口調で囁いた。
そして、何の偶然か、別の場所。
「大丈夫ですか?」
同じ首を傾げ、悪戯めいた表情で、あいちゃんが語り掛ける。
「まだ、いってーよ……頭がズキズキする……」
不快そうな声を絞り出すのは、隆義だ。
菊花に頭を殴られて気絶し、学校に併設されている病院に運ばれ、ようやく意識を取り戻した所──。
頭にはテーピングが巻かれ、氷枕で殴られた箇所を冷やしている。
「菊花、一体どういう事よ!」
「知らんよ!」
隆義の目の前では、母・日向と、姉・菊花が、親子で言い争っている最中だ。
「物で隆義を叩くのやめんさいや! 前もそれで──」
「剣玉のは事故よ! 事故!」
「三針縫ったけどな……(ぼそり)」
「鉛筆投げて刺さったのもあったでしょ!」
「うっ……あれはまさか刺さるとは思わんかったし……」
その口論を、隆義たちから少し離れる形で、あの青い十字が入ったセーラー服の一団が聞いている。
ただし、心の姿だけがそこに見当たらなかった。
「彼、家庭内でもケガが絶えないみたいだね……」
聖叉は落ち着いた様子で、口論の内容を聞いて分析している様子だ。
その後ろでは、背の高い女性看護士がおろおろとした様子で、視線を口論中の二人と隆義の間を行ったり来たりさせている。
「ひ、日向ちゃん、院中よ……? 菊花ちゃんも、ね?」
ギ ロ リ !
振り返った二人から同時に、鋭い目の光を浴びせられ、彼女は額から大粒の汗を流した。
「ひ……」
「う……凄く睨んでるの……」
「おかーさんも奈穂も、ビビりすぎよー」
と、ここに、隆義が気絶させられた際、その場に居なかった人物が加わっていた。
奈穂の姉、奈緒──二人は双子で見た目もそっくりだが、奈緒は気が強そうな印象で、赤いカチューシャを頭につけている。
奈緒は負けじと二人を睨み返し、眼光をきっちりと二人の目の奥にまで届ける。
そのまま三人は睨み合うが……。
「菊花、妙子の言う通りよ。……ここでは迷惑がかかるわ」
「オッケー……」
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