8.思惑の立体交叉

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 妙子が額を手で押さえ、またかという表情をすると、一同は妙子の後ろへと移動を始めた。 「じゃあ──赤葉博士、まずそのタバコの火を消してくれよ。……駐屯地にはいつ?」 「隣の学校を襲った連中が逃げ帰ったすぐ後だ。駐屯地は予備と即応の自衛官を集めて、命令さえありゃいつでも出られるように準備してたぜ?」  隆義に聞かれ、ジジイこと義辰は携帯灰皿を出し、火を消しながら言う。 「──じゃあ、その命令は?」 「国会中継は見てるか?」 「いや……気絶してたし、見てない」 「──民主人民党・管山一郎内閣総理大臣は、自由民政党・斎藤政久議員との、新島組による広島市占拠事件に関する質疑中、自衛隊の治安出動について触れられたすぐ直後、場内で与野党が口論する中、以後の答弁・審議を拒否し、民主人民党全ての議員を引き連れ議場より退室……だそうだ。」 「えぇ? つまりそれって──」 「話を無視して逃げちまったんだよ……」 「チッ……」  そこまで聞いた直後、隆義は舌打ちした。  嫌な意味での、予想通りの展開。やっぱりかよ! と心の内で叫びながら── 「これじゃあ、東日本大震災の時の繰り返しじゃないか……!」 「今回の件、既に多くの犠牲者も出ている。現場の自衛官の皆さんもカンカンだったぜ……。だがよ坊主、一緒に来い」  義辰はそう言うと、隆義の肩に手を置く。 「いいか、真面目な話だ。ここじゃあ、ちょっと話しにくい」 「あぁ……解った」  普段のおちゃらけた様子はどこへ──セーラー服の一同はそれを見て、何故か唖然とする。  それ程までに、義辰は、真面目な口調で隆義に語り掛けていたのだ。  二人はそのまま、廊下を進んで行く。 「あの……」  妙子とその娘の双子たち、魔女のような少女──それらの隣を足早に通り過ぎ、二人はそのまま病院の外へと向かった。  病院の外は、午後の日差しも和らぎ、夕方になりつつある。  午後三時も後半か、四時──隆義は日の傾きから、そう予想する。  風に吹かれながら、義辰は周りを確認すると、タバコに再び火を灯した。 「さて、坊主──さっきの話の続きだ」 「話にくい内容の話って……」  義辰は、紫煙をゆっくりと吸い、そして風の中に吐き出す。  辺りにタバコの煙のにおいが漂い、風に流されていく……。
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